ミニチュアダックスフンドはその胴長の体型から、他の犬種に比べて腰に異常をきたしやすい特徴があります。
また、ホルモン異常やそれにともなう糖尿病の併発など、命にかかわる重篤な疾患も比較的発症しやすくなっています。
ミニチュアダックスフンドに多い病気をご紹介しますので、飼い主の方はぜひ知っておいてください。
ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気の中で、最も多いのが椎間板ヘルニアです。
ヘルニアとは、臓器や組織が本来あるべき位置からとびだすことを指します。
椎間板は背骨と背骨の間にある、クッション材のような役目を果たしているもので、これが変形して飛び出してしまうのが椎間板ヘルニアです。
そして変形した椎間板が周囲の神経を圧迫して痛み・しびれなどをもたらします。
椎間板ヘルニアは、主に激しい運動や肥満、骨の劣化などが原因で起こります。
特に激しい運動をした場合、クッション材の役割をしている椎間板に大きな負担がかかり、損傷してしまうのです。
なお椎間板ヘルニアは、主に2歳から7歳の頃に多く発症しやすい傾向があります。
椎間板ヘルニアの症状は、発症する部分および進行度合いによってそれぞれ異なります。
首の椎間板ヘルニアの場合、神経麻痺により足を引きずります。
悪化すると立ち上がることが困難となったり、4本足すべてが麻痺して半身不随となったりしてしまうのです。
腰部や胸部の椎間板ヘルニアでは、背中と腰に激痛が起こります。
そのため、触られたり動かしたりするだけでも痛がったり、嫌がったりする特徴があります。
そして痛みをかばうため、後ろ足を引きずりながら歩くケースが多く見られます。
なお最も重い症状としては、排便や排尿が困難・下半身が麻痺して痛みすら感じなくなっている(神経障害)といった症状があらわれます。
椎間板ヘルニアは、自然に治ることはほぼありません。
基本的には、症状の度合いを問わず病院に連れていきましょう。
軽度の場合は、投薬によって痛みを抑える治療を行い、その後はしばらくケージ内で安静にさせます。
急性で強い痛みをともなう場合、鎮痛薬や抗炎症薬を投与して痛みを抑えるといったケースもあるようです。
重度の場合においては、高確率で椎間板を除去する手術によって治療が行われます。
しかし、麻酔や外科手術は犬に少なからず負担がかかってしまいます。したがって、椎間板ヘルニアの治療は、できる限り軽度な症状の時に行うべきでしょう。
なお、犬が足を引きずっていると獣医からほぼ手術をすすめられますが、年齢やその他の病気によってはリスクが高いことも否定できません。
獣医とよく話し合ったうえで決めるべきです。
高い場所からのジャンプや、階段の昇降など、腰に負担がかかるような行為はできるだけさせないことです。
特にミニチュアダックスフンドは、ソファからジャンプしただけで、椎間板ヘルニアになってしまう場合もありますから要注意です。
また肥満も腰に多くの負担がかかりますから、食事内容には気をつけましょう。
副腎皮質ホルモンとは、アドレナリンやイオンバランスを一定に保つためのホルモンです。
クッシング症候群は副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって、さまざまな症状を引き起こす病気です。
ちなみに副腎皮質ホルモンは、主に脳下垂体や副腎皮質に腫瘍ができることによって、過剰に分泌されるのです。
クッシング症候群は、主に6歳以上の老犬に多く発症する傾向がありますが、まれに1歳未満の若い犬にも発症することもあります。
特にダックスフンドは、このクッシング症候群にかかりやすいといわれています。
クッシング症候群が発症すると水を大量に飲むようになり、排尿量が増加します。
また、食事の量が多いにもかかわらず体重が減っていく・脱毛・お腹が張るといった特徴が見られるようになります。
なお、メスの場合は発情をしなくなる特徴もあります。
症状が悪化すると、筋力の低下が起きてしまいます。
筋力の低下によって、散歩や運動を嫌がるようになってしまうのです。
以前よりも元気がなくなり、睡眠時間が極端に増えるなど特徴があらわれます。
また糖尿病を併発する可能性もあり、放置をすると命にかかわる可能性もあります。
クッシング症候群の治療は基本的に、薬物投与によって行われます。
一方、腫瘍ができている場合には、外科手術・放射線治療によって腫瘍を除去する治療となります。
残念ながら、クッシング症候群の予防法はありません。
そのため重要な事は、早期発見と早期治療です。
したがって上記のような症状が見られるのであれば、できる限り早めに病院に連れていってあげましょう。定期検診も有効です。
犬の糖尿病は人間と同様、インスリンが不足することによって起こる病気です。
ミニチュアダックスフンドは、糖尿病にかかりやすい犬種なので、注意が必要です。
糖尿病が発症すると食欲が旺盛になりますが、いくら食べてもやせてしまうといった特徴があります。
また水を飲む量が増えたり、排尿の量・回数が増えたりする症状もあらわれます。
糖尿病が悪化した場合、血液中に有害物質(ケトン体)が増加することで、嘔吐や食欲不振・口臭が目立つようになります。
重症になると昏睡状態に陥ったり、最悪命を落としてしまうケースもあります。
糖尿病の治療法としては、人間と同じくインスリン注射を一生にわたって行うことになります。
またインスリン注射と合わせて食事制限や運動療法も行います。
なお、命に関わると判断された場合は、入院による治療が行われることもあります。
糖尿病は一度発症してしまうと、一生付き合っていかなくてはならない恐ろしい病気です。
糖尿病を予防するためには、日頃から適切な食事内容と適度な運動により、肥満にならないように心がけることが欠かせません。
進行性網膜萎縮とは、先天性の目の病気です。
網膜が徐々に萎縮してしまうことで、目が見えなくなってしまうのです。
進行性網膜萎縮に発症すると、暗い場所で目がみえにくくなります。
そのため、夜に散歩をさせる際、障害物にぶつかったり、つまずいたりしてしまうのです。
溝や穴に落ちてしまうこともあり、次第に夜の散歩や外出を怖がったり、嫌がったりするようになってしまいます。
さらに症状が悪化すると、昼間のような明るい場合でも目が見えづらくなってしまいます。
それによってあまり動くことがなくなり、動作もぎこちなくなります。
進行性網膜萎縮は症状の進行がゆっくりなため、飼い主が気づきにくいケースが少なくありません。
進行性網膜萎縮における確かな治療法はありません。
また先天性の病気なため、予防法もないのです。
そのため飼い主ができることは、犬の目が見えないことで、不安やストレスを感じることのないよう、出来る限りサポートしてあげることではないでしょうか。
たとえば室内で飼育しているのであれば、犬がぶつかったりつまずいたりしないよう、余計なものは置かないように心がけましょう。
散歩をさせる際には、障害物や人通りの少ない静かなコースを選んであげて下さい。
ミニチュアダックスフンドは甘えん坊な性格のため、ついおやつなどをたくさんあげてしまう場合もあることでしょう。
しかしミニチュアダックスフンドの肥満は、命にかかわる病気につながってしまうケースが多いのです。
愛犬の長生きを願うなら、健康で規則正しい生活を心がけましょう。