精巣腫瘍は、オスの犬を飼っている方は知っておかなくてはならない病気です。
痛みを伴う様なわかりやすい症状はありませんが、悪化すると命に関わる場合もあります。
精巣腫瘍の症状や治療法、予防法について解説しますので、飼い主の方はぜひ読んでみてください。
文字通り、精子を作る精巣に腫瘍ができる病気です。
精巣には精子の元となる「精粗細胞」、精粗細胞に栄養を与える「セルトリ細胞」、男性ホルモンを分泌する「ライディッヒ細胞があります。
精巣腫瘍は上記のいずれかにできる腫瘍を指します。
精巣にできる腫瘍のうち、約5%~20%が悪性ものです。悪性腫瘍は命に関わるので、早急に対処する必要があります。
セルトリ細胞腫は、その名の通り、セルトリ細胞にできた腫瘍を指します。
主に老犬に多く見られる傾向があり、片方の精巣が巨大化するといった特徴があります。悪性化する可能性が高く、危険な精巣腫瘍です。
間質細胞腫瘍とは、ライディッヒ細胞が腫瘍化したものです。
こちらも老犬に多く発症が見られることが特徴で、男性ホルモンの分泌が少なくなります。
そのため、メス犬のような体つきになるケースもあります。
精巣の片側だけに発症することがほとんどで、大きさは2cm弱と、あまり大きくならないことが特徴です。
セミノーマとは別名、精上皮腫とも呼ばれ、精粗細胞といった精子を作る細胞に腫瘍ができたもので、こちらも精巣の片側だけに発症し、大きさは2cm未満です。セミノーマの大きな特徴は、良性腫瘍なことです。
また4歳以上の犬に多く見られ、ごくまれにメス犬のような体つきになります。
精巣腫瘍を発症したオス犬は、メス犬のように乳腺が張るケースが見られ、通称メス傾向と呼ばれています。
精巣腫瘍を発症すると、精巣が腫れます。時間の経過にともなって次第に大きくなり、片方の精巣のみが大きくなった状態になるのです。
精巣腫瘍を発症すると、脇腹周辺に脱毛や皮膚色素沈着といった症状があらわれます。
犬の精巣腫瘍の主な原因は潜在精巣であり、停滞精巣や睾丸停滞とも呼ばれています。
潜在精巣とは、本来であれば生後2ヶ月頃に正常な位置にまで降りてくるべき精巣が、体内に収まったまま犬が成長してしまうことを指します。
この潜在精巣の発症率は、1.2パーセントと非常に低く、一般的にはそれほど起こる病気ではありません。
しかし一方、潜在精巣を発症する犬はそうでない犬に比べ、精巣腫瘍になる確率は10倍ほど高くなります。
そして悪化した場合、命の危険があるのです。
精巣が生後2ヶ月までに降りてこないもしくは、片方の精巣しか確認できなかった場合、潜在精巣と判断されます。
潜在精巣を引き起こす原因はわかっていませんが、高温に保たれている腹部の内側が細胞を破壊していることによると推測されています。
潜在精巣は「ミニチュア」や「トイ」と名前につくような小型の犬種に発症しやすい傾向があり、主に遺伝や体の構造が関係しているようです。
具体的な犬種としては、以下のようなものになります。
・ヨークシャテリア
・ポメラニアン
・トイプードル
・ミニチュアダックスフンド
・ミニチュアピンシャー
・ミニチュアシュナウザー
手術によって腫瘍化してしまった精巣の除去を行います。
腫瘍化した精巣が陰囊内にある時は、通常の去勢手術と同じ手順にて行われます。
しかし潜在精巣になっている場合には、精巣の位置をレントゲンや超音波でも確認することが困難です。
そのため、開腹して精巣を探し、外科手術が可能であるかを判断したうえで行います。
腫瘍が悪化したり、外科手術をするにはリスクが高いと判断されたりした場合、抗がん剤などを用いた化学療法によって治療を行います。
また、手術の効果を上げるための補助としても行われることもあります。
犬の精巣腫瘍の予防で最も有効な予防法は、去勢手術を行うことです。
去勢手術を行えば、精巣腫瘍が発生することはありません。
また、去勢手術には前立腺系の病気や肛門周辺の腫瘍などを予防し、問題行動や過度な攻撃性を落ち着ける効果もあります。
去勢手術にかかる費用は、20,000円~45,000円ほどが相場ですが、病院によって異なります。
手術を受ける予定の病院に確認を取ることが望ましいです。
先述した通り潜在精巣は、正常な犬と比べ精巣腫瘍を発症する確率が10倍も高くなります。
そのため潜在精巣の治療は、精巣腫瘍の予防に対して高い効果が得られるのです。
ただし潜在精巣は、生後4ヶ月を超えると精巣を降ろすことが困難なため、それまでに治療を施す必要があります。
生後2ヶ月を経過しても精巣が降りてこない場合には、できる限り早く獣医師に相談して下さい。
犬の精巣腫瘍は痛みがなく、わかりやすい症状が出ないため、気づくと悪性化していることが少なくありません。
定期的に検診を行い、早期発見できるようにしてげましょう。特に生まれたばかりの子犬の精巣はしっかりチェックして下さい。
潜在精巣であっても、生後4ヶ月以内であれば、精巣を正常な位置に戻すことが可能です。
精巣腫瘍は愛犬の命に関わる可能性もある危険な病気です。
去勢手術によって予防できますが、もし去勢を行わない場合、早期発見のために定期検診を受けさせてあげましょう。