人間は歯並びが悪いと歯列矯正を行うことがありますが、犬にも噛み合わせがあるということをご存知でしょうか?
噛み合わせが大きくズレる、いわゆる「不正咬合」は、様々なトラブルの原因となってしまいます。
原因や症状、対策など詳しく解説しますので、飼い主の方はぜひ参考にしてみてください。
犬の不正咬合とは、上下の歯が正常に噛み合っていない状態を指します。犬の歯は永久歯で42本、乳歯は28本あります。
そして乳歯から永久歯に生え変わるのは、最も早い前歯で生後4ヶ月頃、最も遅い奥歯で生後6ヶ月頃です。
歯が生え変わる際に、一部の歯が異常な方向に生えてしまったり、上下の顎の長さが異なったりすると、歯が綺麗に噛み合わなくなります。
この状態が、不正咬合と呼ばれているのです。
犬の不正咬合の症状は、次の4つです。
クロスバイトは、上下の顎は正常ですが、一部の歯並びに異常がある状態を指します。
クロスバイトには下の前歯が前方に突き出る前方クロスバイト、下の奥歯が舌側に傾く後方クロスバイト、下の犬歯が上の犬歯側に傾く犬歯クロスバイトといったタイプがあります。
オーバーバイトは、下の顎に対して上の顎が長い、いわゆる出歯(でっぱ)のような状態になっていることです。
場合によっては、下の歯が上顎を傷つけたり、穴をあけてしまったりするケースもあります。
アンダーバイトとは、オーバーバイトとは逆で、上の顎に対して下の顎が長い状態です。
人間にたとえると、しゃくれている状態に似ています。
ライバイトとは、左右の歯のバランスが悪いまま成長した状態を指します。
左と右でかみ合わせの高さが異なるため、顎が曲がって見えてしまうのです。
犬の不正咬合の主な原因は、乳歯遺残(にゅうしいざん)・遺伝・外傷の3つです。
乳歯遺残とは、永久歯が生えてくる際に、抜けるはずの乳歯が抜けずに口内に残ることで、永久歯の成長を邪魔してしまう状態のことです。
乳歯は永久歯が生えてきた場合、通常は2周間以内で抜け落ちます。
しかし乳歯が中々抜けないことがあり、永久歯に悪影響をおよぼした結果、クロスバイトを引き起こしてしまうのです。
乳歯遺残は小型犬によく見られることから、顎の骨・歯の大きさのバランス異常が原因と考えられています。
ブルドッグやボクサーのような、生まれつき不正咬合になる犬種は、人間が意図して生み出したものです。
そのため遺伝が原因の犬種については、そういう特徴を持っているのが通常であり、異常ではないと考えましょう。
幼犬の頃に、顎の骨折や脱臼などによって左右の歯がバランス悪く生えてしまうケースもあります。
乳歯遺残はクロスバイトを発症させやすくまた、以下のような顎の小さい小型犬が発症しやすい傾向があります。
・パグ
・チワワ
・トイプードル
・ヨークシャテリア
・フレンチブルドッグ
不正咬合は短頭種に多く見られ、具体的には以下のような犬種が該当します。
・ブルドッグ
・フレンチブルドッグ
・パグ
・ペキニーズ
・ボクサー
口内炎は、口内の粘膜が炎症を引き起こす病気のことです。
発疹、口臭、痛みといった症状があらわれます。不正咬合によって口内が傷つき、細菌やウイルスに感染しまうことが原因です。
歯周病は歯に付着した細菌などが原因で、歯茎や骨に炎症を引き起こす病気です。
症状が悪化すると、口臭・口内の出血・歯のグラつきといった症状がでるようになります。
口内炎と同様、口内が傷つくことで細菌が繁殖し、引き起こされます。
乳歯がほぼ生えそろった時期を目安として(生後8週齢)、上下の顎の長さのチェックを行い、正しいバランスを保っているかの判断をします。
上下の歯が上手くかみあわさっていない場合、抜歯を行います。
そして犬歯が下側に傾いているときも、早めに抜歯をしないと永久歯が正常に生えてきませんから、抜歯を行うのです。
また、永久歯へと生え変わる生後6ヶ月頃に乳歯遺残が確認できた場合、永久歯が生えてくることを邪魔してしまうので、早めの抜歯が必要です。
永久歯が生えそろった後に不正咬合が発覚した場合、歯列矯正によって治療を行います。
歯列矯正は、オーバーバイト・下顎の犬歯が舌側に傾いて口蓋を傷つけているといった、不正咬合によって食事ができないなど、日常生活に支障をきたすほどの激しい苦痛をともなっている場合に行われることが多いです。
しかし、歯列矯正は専門性が高い分野となり、全ての動物病院が対応しているわけではありません。
犬の不正咬合の予防は難しいです。なぜなら、犬の歯が生え変わる仕組みが現在でもわかっていないからです。
したがって現在のベストな対策は、乳歯が生えそろった時点と、永久歯に生え変わる直前に検査を受け、対処をすることです。
不正咬合を防ぐためには、歯が生え変わる時期の飼い主の対処が重要です。
素人が歯並びの以上を判断することは難しいので、乳歯の生え揃いと永久歯への生え変わりの時期に、動物病院に相談するのがベストでしょう。