縦横無尽に動き回る猫はケガをすることが少なくありません。特に、外に出して飼っている場合は大ケガをしてしまうこともあります。
そんな時、飼い主としてスムーズに対応するため、猫に多いケガと対処法を解説します。
猫がケガをする原因はさまざまですが、最も多いのが他猫とのケンカです。そして他猫とのケンカが起きる理由は以下の2つがあげられます。
発情期のオス猫はメス猫の取り合いによるケンカでケガを負ってしまうことが少なくありません。
猫は自分の縄張りに他の猫が侵入してきた場合、排除するためにケンカをしかけます。猫の縄張りには以下2つの縄張りの種類があります。
ホームテリトリーとは、猫が食事をしたり、睡眠をとったりするプライベートな場所を指します。
家、または庭といった狭い範囲内で、他の猫の侵入が比較的少なく、猫がくつろぐ場所と言ってもいいでしょう。
完全室内飼いであっても、多頭飼いの場合はホームテリトリーを取り合ってケンカをすることがあるので、注意が必要です。
ハンティングテリトリーとは、ホームテリトリーを中心に直径500mの範囲で食料を調達するための縄張りです。
大部分を他の猫と共有をし、顔見知り同士の猫はケンカに発展することもありません。
しかし、よそ者の猫がハンティングテリトリーに入ってきた場合にはケンカになるケースが多く、ケガを負うこともあります。
オス猫は他の猫の縄張りを略奪しようとすることがあるため、縄張り争いによるケンカが多いのです。
猫の歯は鋭さと長さがあり、かむ力も強いのです。かまれた傷は一見すると小さいのですが、深く筋肉まで達してしまうケースもあります。
表面からだと傷口が小さく見えたり、塞がっていたりしても皮膚の下で細菌感染を起こし、後で化膿・炎症を引き起こす場合がありますので、しっかり応急処置をしてあげましょう。
猫は毛で覆われていて傷口がわかりにくいため、毛をカットしつつ傷を見つけることが望ましいです。傷が見つかったら、かすり傷程度なのか、激しい出血を伴うものなのかを確認して下さい。
出血が少ない場合ガーゼを当てて止血し、可能であればエリザベスカラーを使い、猫が傷口をなめないようにしましょう。
まずは傷からの出血をなにかやわらかいもので圧迫し止血することが重要です。
出血量が多く、猫がぐったりしているのであれば、できる限り早めに動物病院に連れて行って下さい。
爪のひっかき傷に関しては、かみ傷に比べると軽症な場合が多いです。ただし爪によるひっかき傷で注意すべきは目です。他の猫にひっかかれて目の角膜に穴があいてしまうケースもあります。
ひっかき傷によって目を負傷している場合、目を閉じていることが多いため、飼い主はしっかり確認した上で応急処置をして下さい。出血については、かみ傷と同様の処置を行いましょう。なお手に負えないと判断した時は、できる限り早めに病院へ連れて行って下さい。
ねんざをすると、患部が赤く腫れる・熱をもつ・触られるのを嫌がる・足を引きずるといった症状がみられます。原因は高い場所からの落下や足場が悪い場所での全力疾走、交通事故などさまざまです。室内飼いでもねんざをしてしまう場合があるので、注意が必要です。
ねんざをした場合、発症した炎症を抑える処置をします。炎症を抑えるために、できる限り患部を動かさずに氷水などで冷却します。
骨折や脱臼をしているかレントゲンを撮ることをおすすめします。
これだと骨折しててもわからずに3日間待ってしまう可能性があります。
脱臼とは、骨が関節から外れてしまった状態を指します。猫が脱臼をする原因として、転倒・衝突・先天的・落下・交通事故・急な方向転換などがあげられます。よく脱臼する箇所は、股関節と尻尾です。脱臼は、外で活動する時間が長い猫の発症率が高くなっています。
脱臼をすると、足を引きずる、左右の足の長さが異なるといった症状があらわれ、尻尾の脱臼の場合には排泄がうまくできなくなることもあります。
飼い猫が脱臼してしまった場合は、基本的には動物病院に任せて下さい。外れた関節は、知識のない方が対処できるものではありません。脱臼の治療は主に整復・外科手術・排泄の補助などを行います。
整復とは脱臼した関節を元に戻す作業のことを指し、全身麻酔をかけたうえで行われます。そして骨折や靭帯断裂を併発している場合、外科手術によって損傷した部位の治療をします。なお手術後は、数週間ほど猫を安静にさせておくことが欠かせません。
入院であれば問題ありませんが、連れて帰る場合、ケージに入れて動かさないようにする処置が必要です。排泄の補助に関しては、カテーテルや軟便剤の注入が行われます。
猫が骨折をする主な原因は、交通事故、他の猫とケンカ、高い場所から落下、骨の腫瘍、肥満などがあげられます。そして骨折したときにあらわれる症状として、骨折部の変形、歩き方の異常、骨折部の痛み、マヒなどがあり、下顎の場合、口を閉じることができなくなります。
骨折をした場合、骨折部を固定した上で動物病院に連れていくのが望ましいです。なお、猫が暴れて手に負えない状況でしたら、そのまま動物病院に連れていくことも検討して下さい。
板や硬い素材のものにタオルを巻いた副木を、骨折部にあてて固定します。固定する際、血液の流れを止めないよう、きつくしすぎないようにして下さい。
猫は興味本位で部屋にある小物・化学薬品・毒物、毒虫・毒植物を飲み込んでしまうことがあります。
そういった異物を飲み込んだ場合、以下の症状がみられます。
・えづき
・口内に何もないのに口をパクパクさせる
・食欲不振
・ぐったりする
・呼吸困難
対処法としては、次の方法があります。
・異物が目視で確認できる場合、指やピンセットなどで異物の除去
・催吐剤により、異物を吐きださせる
催吐剤には催吐作用があり、異物を吐き出させることができますが、胃粘膜を荒らしたり、吐いたものがのどに詰まってしまうリスクもあります。また、飲み込んだものが尖っていたりすると、喉を傷つける可能性も否定できません。
あくまで緊急手段として、基本的には病院に連れていきレントゲンやエコー検査などで確認しましょう。
動物病院では、内視鏡による摘出や胃洗浄、下剤などによって、より安全に治療を行うことができます。
主にストーブ、グリル、熱いお風呂への落下、コタツ、ストーブ、カーペットなどによってやけどをします。
やけどをした場合、次のような症状が見られます。
・やけどをした部分を気にする
・やけどをした部分に触れると嫌がる
・皮膚に赤みや水ぶくれができている
・皮膚がむけている
やけどをした部分を冷水または氷水で冷却しましょう。すぐに冷却することで、悪化を防ぐことが可能です。
また皮膚に水ぶくれができていたり、地肌が露出するほどの重度であったりした場合、早めに動物病院に連れていきましょう。
飼い主が気をつけて未然に防いであげるのが一番ですが、それでも猫が思わぬケガをしてしまうことはあります。
そんな時に、速やかに適切な処置ができるよう、しっかり対処法を頭に入れておくことをおすすめします。