犬を飼う上で最も気をつけなければならない感染症の一つである犬フィラリア症。
愛犬の身体に深刻なダメージを与え、命を落とす原因になってしまうこともあります。
フィラリアの危険性から予防法まで詳しく解説します。
犬を飼っている方はフィラリアについてしっかりと知識を身につけ、愛犬を守ってあげてください。
フィラリア症とは、寄生虫の一種であるフィラリアによって発症する症状の全般を指します。
そして犬に寄生するフィラリアは、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)と呼ばれている種類であり、主に犬の心臓や肺動脈に住み着きます。
フィラリアの幼虫(通称:ミクロフィラリア)は、動物の血管に移動することで、蚊などの吸血昆虫に吸い取られます。
吸い取られたミクロフィラリアは、吸血昆虫の体内で脱皮を繰りかえすことで成長し、吸血昆虫が他動物の血液を吸った際に、その動物の体内に侵入して感染させます。このサイクルを繰りかえすことにより、次々と感染を繰り返してしまうのです。
フィラリア症に感染した犬は、元気がなくなったり、呼吸困難におちいったりします。
適切な処置をせずに放置すると、最終的には死に至ってしまう恐ろしい病気です。
犬のフィラリアには、急性フィラリア症と慢性フィラリア症の2つがあります。それぞれ特徴が異なるので、個別に見ていきましょう。
慢性フィラリアの症状は以下の通りです。
・気管支静脈の血流の悪化による咳
・肝臓や腎臓の障害
・息切れを起こしやすく、散歩を嫌がるようになる
・四肢がむくむ
・大量の水を飲むようになる
・腹水
症状が悪化すると、お腹がふくらむほど水が溜まり(腹水)、失神してしまう場合もあります。
急性フィラリアの症状は次のようになります。
・赤褐色の尿が出る
・目の白目部分や歯茎が黄色くなる(通称:黄疸)
・食欲不振
・以前に比べて元気がなくなった
・主要臓器の機能不全
・呼吸困難
・突然死
急性症状が悪化すると、呼吸困難におちいってしまい、場合によっては突然死をしてしまう危険性があるのです。
上記の症状があらわれた場合、すぐに動物病院に連れて行ってください。
フィラリアに感染する原因は犬が、ミクロフィラリアを含んでいる蚊に刺されることにより起きます。
また屋外で飼っている場合、室内で飼っている犬よりも、蚊にさされる可能性が格段に上がります。
そのため、屋外で飼育していることが、フィラリアに感染する間接的な原因にもなっているといえるのです。
犬フィラリア症の治療法は、主に以下となっています。
フィラリア症が急性の場合は命にかかわるため、一刻の猶予もありません。
そのため、緊急の外科手術をする必要があるのです。
頸部(首)の静脈から器具を挿入し、心臓内に潜んでいるフィラリアを釣り上げる治療を行います。
しかし、犬が外科手術に耐えることが不可能と判断された場合、症状を抑えるための療法を中心に行います。
ただしこの方法は、原因を根本から取り除くことはできません。
慢性フィラリア症の場合は、駆除薬を使用してミクロフィラリアを駆除する治療が行われます。
しかしこの駆除薬によって死んだミクロフィラリアの遺骸が、肺動脈に詰まってしまい、呼吸困難を引き起こす可能性があるのです。
そして最悪の場合、死に至ってしまうケースもあります。
フィラリアの遺骸は、生きているフィラリアと同じ、もしくはそれ以上に犬の身体に悪影響を及ぼします。
そのため駆除薬の投与は自己判断で行わず、必ず獣医師の指示に従って下さい。
先ほどフィラリア症の治療法を説明しましたが、フィラリアの駆除は可能です。
しかし残念ながら肺や心臓、血管などは、フィラリアによって深刻なダメージを受けている場合がほとんどで、元の状態に戻ることはありません。
先述した通り、発症後における外科手術・駆除薬による治療、いずれにしてもリスクが高いことは、察している方も多いことでしょう。
したがって最善のフィラリア症への対策は、そもそも発症させない事つまり、「事前に予防する事」です。
フィラリア症は、しっかり予防をすることで防ぐことが可能です。フィラリア症を予防するために必要なことは2つ。
1つ目は毎月1回、愛犬に対し確実に予防薬を飲ませることです。2つ目は、予防薬を飲み始める時期と終わりの時期を厳守することです。
ただし予防薬を投与する際、フィラリア症に感染していないことが前提です。
感染していると、ミクロフィラリアが体内にいる状態となっています。
その状態で予防薬を投与すると、アレルギー反応を引き起こして、犬が死んでしまう危険性があるのです。
そのため、予防薬を飲ませる前には必ず事前に感染の有無を確認しましょう。
動物病院にて、犬の血液検査をすることで簡単に確認をすることが可能です。
一般的に、フィラリア症の予防薬は1ヶ月毎に投与する必要があります。
ミクロフィラリアが体内に入ってから、肺や心臓の血管に達するまで、2ヶ月かかります。
つまり予防するには、ミクロフィラリアが体内移動を開始する前に駆除することが必要不可欠です。
したがって、1ヶ月に1回確実に犬へ予防薬を与えなければなりません。なお、数日遅れても問題ありませんが、必ず投与して下さい。
予防薬を飲み始める時期は、蚊が飛ぶようになってから1ヶ月後です。飲み終える時期は、蚊がいなくなってから1ヶ月後となります。
それぞれの時期については、地域や環境によって異なり、その年ごとに変わる可能性もあります。
したがって時期の確認は、動物病院に相談し指示を仰ぎましょう。
決してやってはいけない事は、自己判断で予防薬をやめてしまうことです。
たとえば、「涼しくなって蚊を見なくなったから大丈夫」という判断です。
これは単に気温が低くて蚊が活動していないだけ、というケースが多いのです。
そうして最後の投薬をしなかった場合、フィラリア症に感染するリスクが高くなります。
そしてこれまで行ってきた予防が無駄になってしまうのです。ですから自己判断で行動せず、必ず獣医師さんに相談して下さい。
フィラリア予防薬犬に与える際にも注意を払う必要があります。
ごくまれに、飼い主の見ていないところで犬が薬を吐き出すケースもあります。
その場合も、予防が全て無駄になってしまいます。対策として、投薬をしたらしばらくは気をつけて犬を観察しましょう。
犬フィラリア症は、事前に投薬をすることで予防できる病気です。
予防ができるかどうかは、飼い主さんの心がけ次第といっても過言ではないでしょう。
少しでも心当たりがあるのでしたら、動物病院に相談することを検討して下さい。