猫の避妊・去勢について考えることは、飼い主として猫と共存していく上での義務と言っても過言ではありません。
少なからず猫の身体に負担をかける行為ではありますが、責任を取れない繁殖を防ぎ、病気から守るというメリットも存在します。
どのような判断をするにしても、まずはしっかりと知ることから始めましょう。
メス猫の避妊・オス猫の去勢手術は、赤ちゃん猫を新たに飼う時間的余裕・経済的余裕がない場合などに、必要な処置です。
一方、手術する際のデメリットも少なからずありますから、メリット・デメリットを理解した上でベストな選択をして下さい。
メス猫の避妊手術をするメリットは、以下の4つです。※去勢については後述します。
・病気の予防ができる
・発情期によく見られる問題行動がなくなる
・望まない妊娠や出産を避けることができる
・発情期のストレスがなくなることで、性格が穏やかになる
以下で1つずつ見ていきましょう。
メス猫の避妊手術を行う上で、最大のメリットです。避妊手術をすることで、性ホルモンや生殖器に関連する様々な病気を予防することができます。具体的には乳腺腫瘍・子宮蓄膿症・子宮内膜炎・子宮がん・卵巣がんといった、病気があり、命に関わるものも少なくありません。
避妊手術を行う時期が早いほど発病リスクを抑えることができるので、出来る限り1歳までに手術をする事が望ましいです。
発情期におけるメス猫は、オス猫を求めるため、大きく甲高い鳴き声を発します。またメス猫は、交尾の刺激によって排卵する交尾排卵動物のため、交尾ができるまで発情が数週間続く場合があるのです。昼夜を問わずこの鳴き声を出すため、近所の方とのトラブルにもなりかねません。避妊手術を行うことにより、上記のような鳴き声を発することはなくなります。
猫は、交尾をすることで排卵が起こる動物ですから、交尾を行うと高確率で妊娠します。飼い主の知らない間に外出して妊娠してしまうケースも少なくありません。飼いきれなかったり、望まない妊娠で産まれてきたりした猫の末路は、殺処分です。
新たに子猫を飼いたいといった理由がない場合、避妊手術をすることでそれらを回避することができるのです。
避妊手術を行うと、性格がおだやかになったと感じられるでしょう。これは発情時の問題行動がなくなるためです。根本的な性格が変わってしまうわけではないので、安心してください。
避妊するデメリットは、以下の2つです。
・太りやすくなる
・全身麻酔のリスク
避妊手術を行うと、猫が太りやすくなる傾向があります。原因として、基礎代謝の低下や、活動性が低下しても、食欲が増加することがあげられます。しかしこのデメリットは、飼い主が与える食事の量をコントロールすること、よく遊んであげることで解消できるでしょう。
避妊手術を行う際には、全身麻酔をかける必要があります。
しかし避妊手術は基本的に健康な猫に対して行い、時間も長くて30分程度です。したがって、他の手術よりはリスクが低いといえます。
次に、オス猫における去勢手術のメリット・デメリットを説明します。
オス猫の去勢手術のメリットは、以下の4つです。
・性格が穏やかになる
・外に出たがらなくなる
・スプレー行動の抑止
・寿命がのびる
オス猫は去勢手術を行うと、噛んだり暴れたりすることが少なくなります。
オス猫が外に出る理由で多いのが、メス猫を探していることです。そのため、去勢手術をすると外に出ようとする行動が落ち着きます。
オス猫全てにあてはまるわけではありませんが、外に出たがるオス猫に対して特に有効です。
オス猫は性熟期を迎える生後6ヶ月頃から、尿によるマーキング行動を部屋ですることが多くなります。猫の尿はにおいが強いため部屋でのマーキング行動は、飼い主にとって頭を悩ます問題ですので、これが解消できるのは大きなメリットといえるでしょう。
ただし、マーキングをする癖が一旦ついてしまうと、去勢手術をしてもマーキングをしてしまいます。したがって去勢手術は、生後6ヶ月を目処に行うことを検討しましょう。
去勢手術をしたオス猫は、手術をしていないオス猫に比べ、寿命が長い傾向があります。
これは外での事故や感染症、他猫とのけんかが少なくなることが理由です。
また、去勢手術を行ったことで、ストレスが大幅に軽減されることも長寿の一因といえるでしょう。
去勢手術を行うデメリットは、メス猫の避妊手術のデメリットと同じです。
・子どもが残せなくなる
・太りやすくなる
・全身麻酔のリスク
上記のことから、新たに子猫を飼いたいといった理由がない限り、メス猫・オス猫にはそれぞれ避妊・去勢手術を行うことが最も合理的といえます。デメリットもありますが、手術をしないことで起こるリスクに比べると、微々たる問題です。
一番のデメリットである、全身麻酔のリスクに関しても近年は、麻酔薬、モニター機器の発達によって麻酔中に亡くなってしまうというケースはほとんど無くなっています。そのため手術をしない理由がない場合、避妊・去勢手術はしっかりと行うべきです。
避妊手術を行うベストな時期は、猫がはじめての発情期を迎える前が最も望ましく、生後6ヶ月~8ヶ月あたりが目安です。
手術に必要な費用は、概ね2万円~5万円ほどが相場となっています。
オス猫の場合は、メス猫と違い決まった発情期間はなく、メス猫が発情していればいつでも発情できることが特徴です。
また去勢手術をする時期は先述した、スプレー行動が始まる生後6ヶ月あたりに行うことがベストです。
去勢手術の費用は、1万円~3万円が相場です。避妊手術と同じく、動物病院によって費用は異なります。
新しい子猫が必要といった理由がない限り、避妊・去勢手術を行うことは、飼い主の義務であると言っても過言ではありません。
飼い主がそれを怠ることで、苦しむのは飼い猫なのです。